タイのPun Punから学ぶ幸せのあり方
前回、TEDtalkについての記事を書いたのですが、実はPun Punファームに行きました。
前回の記事はこちら ↓
タイのチェンマイは2回目、住みたいくらい私の大好きな街です。
チェンマイに行ったら行こうと思っていたので、今回時間を作っていくことが出来ました。
宿泊先のAir Bnbのルームメイトだった韓国人女性と意気投合してしまい、彼女は環境問題や国際問題の研究者だったこともあり、一緒に行ってきました。旅先での出会いは本当に楽しい。
チェンマイ市内から車で1時間ちょっとの郊外にファームはあります。周りは田んぼと森に囲まれた場所です。看板があるらしいのですが、探すことができず、タイ人のドライバーに探し回ってもらいました。笑
Pun Punファームは有名になりましたが、綺麗に整備された場所ではないし、オシャレなカフェやレストランがあるわけでもない。ファーム内を案内してくれる人がいるわけでもありません。これはファームで働く人の仕事を増やしてしまうから、あえてしていないそうです。Pun Punにいる人はあくまでそこで暮らしている人たちです。英語が話せる人は一部しかいません。
もし興味がある人や色々質問したい人は、ワークショップに参加したり、ボランティアで住んでみたほうがいいと思います。
私も少し散策して帰ろうと思っていたら、ラッキーなことにボランティアで1か月滞在しているタイ人の青年が案内してくれました。彼が学んだこと、Pun Punの理念などをシェアしてくれ、気づいたら3時間以上話し込んでしまいました。
Pun Punで何をしているのか
Pun Punではそこに住む人たちがみんな先生。農業の細かい技術を学ぶのではなく、生活を通して学んでいきます。ここにルールはなく、自分が正しいと思えばやっていいそう。皆、朝は起きたい時間に起きて働き、ランチの後は昼寝してまた少し働く。人間の本来の欲求に沿った生き方。
動物の世話をしたり、苗を植えたり、除草したり、種を集めたり、やることはたくさんあるけど、のんびりやればいい。
外部訪問者が多いためオフグリッドではなく、電気とガスは引いています。シャワーはソーラーパワー加熱のものでした。
Pun Punに住む人は、健康保険に加入していないそうです。なぜならオーガニックな野菜を食べていれば不健康になることはないから。人工的に作られた食品、薬を摂取するから病院へ行かないといけないのです。
”世界は変わっているわけではない、世界を複雑にしているのは人間だ”
Pun Punの理論は、一見突拍子もないように思える。
でも、世界を一番簡単に、シンプルに豊かにする方法なのだと。
ニワトリ・乳牛
ファームには約30羽くらいのニワトリと3頭の牛がいました。
ニワトリは元々養鶏場の狭いケージで飼われていたものを引き取ったそうです。6歳以上の鳥が大半、まだ卵は産んでくれます。ニワトリの平均寿命が8歳なのを考えると余生を広い庭で過ごせるのは彼らにとっても良いのかも(理想はすべてのニワトリがフリーレンジで飼われることですが。)
タイでは水牛しか見たことなかったのですが、ここの乳牛も引き取ったものだそうです。
私もニュージーランドで、こういう場所に住んだことがあります。生みたての卵を鶏小屋から取ってくる、搾りたての牛乳を頂ける、これは本当に幸せというか、命のありがたみを感じます。皆さんにもぜひ体験していただきたい。
Earth house
Pun Punの建物は彼らが自分で建てたものです。土や粘土をこねて木枠にはめてレンガを作ります。なんとこのレンガはコンクリートよりも強度があるとか。
設立者のJon Jandaiはアメリカ人と結婚しており、ネイティブアメリカンの家を見たときにインスピレーションを受けたそうです。そうして彼が始めた家造りは、今ではタイ中に広がっています。(日本では建築基準法とかあるからどうなんでしょう...)
現在建設中の家を見せてもらいました。カラフルなグラスビンを埋め込んだり、電気配線のソケットを埋め込むこともできます。ワークショップに来た人がこれを手伝うことも。
2階の窓からの景色は絶景でした。緑が広がる田んぼと蓮の池。
Seed Saving
ちょうどバジルの種を集めて保存用にしていく作業やっていたので、少し手伝いました。細かい種を集める作業です。
気の遠くなるような作業、こういった手作業は昔は女性がやっていた仕事ですが、今では”cool”な仕事ではないので皆やりたがりません。でも種を守ることは、未来への投資だと感じました。あと、個人的にこういった何も考えずにできる作業は瞑想みたいで好きです。笑
一緒に作業したタイ人の女性、彼女は料理人です。市場やスーパーで買う大量生産の野菜が美味しいと感じられず、田舎で無農薬で育った野菜の美味しさに気づいたといっていました。彼女は2週間の休みをとって、Pun Punでボランティアスタッフをしているそう。帰りたくないといっていました。
Pun PunがやっていることのひとつはSeed Saving、つまり種を守ることです。種を守ることは食べ物を守ること。健康でいるには、農薬や化学的な薬品を使わない野菜を食べること、それだけなのです。日本でも種子法や、使用可能農薬の種類の拡大など、逆行していますが、タイでもそうなのです。それは”お金”中心に回っているから。
世界中でSeed Savingの活動が行われている一方、利益を重視する多くの政府や会社はそれを好まないのでしょう。
シェアすること、対話すること
ファーム内を案内してくれたタイ人の青年、彼もまた私にいろんなことを気づかせてくれました。彼は大学生で学校の休み期間にPun Punに来ました。電気工学を学んでいたのですが、卒業後は農業を始めると決めたそうです。(彼の他にも数人、工学部の学生が何人か働いていました。)
私と友人、そしてタイの青年と3人で、教育、働き方、経済の事などいろんなことを話していました。
タイは戦後経済発展した日本や韓国をお手本にしているので、良い教育を受けて大きな会社へという流れはやはりあるそうです。その彼も、親に厳しく育てられ”いい子”に育ってきたのですが、考え方を変えていったそうです。
私たち3人に共通していたのは、良い教育機会を与えてくれたことは親に感謝している、でも昔の価値観とは変わってきているのだ、と感じていること。
といっても、タイでもまだこういうことに疑問を持つ人は少数だそう。日本でも少しずつ田舎に移住したり、働き方を変え始めていますが、まだ一部の人ですよね。
色んな事を話して、彼に卒業後のことを聞くと、農業を始めるとのこと。ラッキーなことに彼の父は土地デベロッパーなので、土地を準備するのは比較的楽だと。でも、父親のように経済重視の開発はしたくないそう。「土を豊かにするために、まずバナナの木を植える。バナナの葉っぱなどが土を豊かにし土壌が改良される。そしたら色んな作物が育てられる。」そして彼は言っていました。「このプロセスは時間がかかるものだけど、世界を豊かにしてくれるから。」そして「人生の目的は、生きていることに感謝することだ」と。
(大学生でここまで悟れるなんてすごい!)と尊敬の念がわきました。
タイから帰ってきた後、私の頭はパンクしてしまいそうでした。新鮮で、興奮している一方で、まだ自分の中で不安があるからです。
さっそく自給自足に近い生活が出来るかといったらできません。私は田舎も都会も好きだから。私はテクノロジーの発展の恩恵をうけているし、時にはおしゃれなカフェにも行きたい。Jon Jandaiのようにシンプルに生きられたらと思う反面、自分のキャリアだとかこれからの仕事を難しく考えてしまう自分もいる。都会のビル群は息苦しいけど、やはり便利な都会が好きな自分もいる。
人生を複雑にしているのは人間自身だ
これが私が今回いちばん感じたことです。もちろん、新しいサービスを作って暮らしが楽になるのはすばらしいことです。その一方で、不安を煽られたり、欲求を満たそうと必要以上に物を買ってしまったり、自分にはこれが足りていないと必死になったり。
私がこれから大切にしていきたいこと。
足るを知ろう、人と支え合うことの大切さをしろう、資本主義で生きている以上お金は必要だけど、お金以外の価値に気を使ってみよう。そして、家庭菜園でいいから農的生活を取り入れていこう。
そう思ったら、今まで情報多過で不安ばかり煽られていたのに、少し気が楽になりました。